■ 創造支援システムについて【2.人とシステムとのインタラクション】

2.人とシステムとのインタラクション

人は何らかのシステムを操作するとき、システムの反応(応答)に対し注意を注ぐ傾向があります。これは自分が意識して行った操作と、その操作に対する相手(システム)の反応との間の対応関係に関心を示ことの一つの表れでもあります。
創造支援技術研究所では人とシステムがインタラクションを繰り返すの過程の中にも新しい気づきや発想の「種」があると考え、H-A I (Human Agent Interaction) を重視しています。
例えば文書を何らかの方法で分析し視覚化した場合には、単に最終的な分析結果を得るだけでなく、システムが提示した内容に対し人がマウスクリックなど何らかの操作をすると、システムはそれをうけて、提示してある情報の色や形をただちに変化させるといったインタラクションができるようにすることを考えました。
図1C.に例を示します。
この図は前回(「1.情報の視覚化」)でご覧いただいた図1B.と同じものです。これはシステムが文書情報を分析し結果を語木で描画した内容に対し、マウスで末端語のひとつである「ガス」をクリックした時の状態を示したものです。このクリックによりシステムは「ガス」から根語である「フロン」に向かう経路をたどり、その語系列に含まれる語を強調表示し関係を持つ一連の語群が明示的に表示されます。
図1C.語情報の表現方法1
ただし、ここでも注意すべき点があります。たとえば人が行った操作に対しシステムが何の反応も示さなかったり、また反応が確認されるまでに長時間を要するといったことがあると、人の思考を中断させるなど負の影響が生じるリスクが高まることが考えられるということです。
そこで、人とシステムとのインタラクションに関しては、人がシステムに加えた操作に対するシステムの応答は即座にかつ明確な視覚的情報でなされることを重要なポイントとして実装するとしました。

<例>「連想支援システム」での実装

開発中の「連想支援システム」でも、情報源として用いた文書(もしくは文書群、段落、段落群)を分析した結果を単に固定的に表示するだけではなく、樹形図(語木)で描画された情報をマウス操作により選択的もしくは段階的に変化させることができる機能を実装しました。

たとえば、その時点で描画されている語木について、ユーザーが注目した語をクリックすると語木全体中に存在するその語を強調表示させたり、注目した語を含む語系列のみを強調表示させたり、さらには特定の語系列のみを段階的に描画させるなど、さまざまな描画方法で語木を視覚的に変化させることができるようにしました。

下記に例を示します。
図5.は、マウス操作により語木の「枝葉」を段階的に描画する例を色で区別して示したものです。
図5.段階的な語の表示例1
マウス操作で根語である「フロン」を1回クリックすると、「フロン」(赤色)と関係がある語としてピンク色で表示された階層の語「メタン」,「光」が表示されます。さらにもう一度クリックすると、1回目のクリックで表示された内容に加え、ベージュ色で表示した階層の「ガス」,「反応」,「除去」,「ハロゲン」が表示され、さらに3回目のクリックでは2回目のクリックまでに表示された内容に加え、白地青線で表示した階層の「分解」,「ガス」,「除去」が表示されるといったように段階的に語情報が提示できます。(注:ピンク、ベージュ、白地青線での表示は、各階層をわかりやすくするためのものであり、実際はすべて赤色で表示します。)

また図6.は、描画されている語木の中で特定の語をクリックした時の例を示したもので、ここでは「ハロゲン」をクリックしたときのシステムの応答を示しています。
図6.特定の語系列の強調表示例1
図6.は文書分析後、描画された語木中で「ハロゲン」をクリックした時の語系列を示しており、赤色で示した〔フロン〕ー〔光〕ー〔ハロゲン〕ー〔分解〕、〔フロン〕ー〔光〕ー〔ハロゲン〕ー〔ガス〕、〔フロン〕ー〔光〕ー〔ハロゲン〕ー〔除去〕といったように、系列を構成する一部の語が異なる3種の語系列があることを示しています。
これらの機能を用いると、描画されている語情報に対してマウスで何らかの操作を行う前に、「操作後にはどのような語情報が表示されるか?」を推測するといった使い方ができ、次回説明する「連想ゲーム的」な操作ができます。

このように、その時点までの視覚情報に基づきにイメージしていたものと、操作したあとに提示された情報の変化を視覚的に認識することにより、何らかの新たなイメージが生まれることを期待しています。

なお、この他にも、任意の語をクリックしたとき語木全体の中でその語が出現する位置を強調表示したり、またその語が含まれる語系列をすべてピックアッ プし強調表示するといった機能をはじめ、複数の表示方法により語木の表示を変化させることができ、人とシステムとのやりとりの過程をすべて視覚的情報として提示するよう にしました。

今回説明した「人とシステムとのインタラクション」機能は、次回説明する「ゲーム感覚の操作」機能とは本来切り離せるものではありません。今回の説明と次回の説明を合わせることで、開発中の「連想支援システム」のイメージがつかめると思います。

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2016年12月31日
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